【技術コラム】シリコンフォトニクスがもたらす計測・検査のパラダイムシフト 〜SEMICON Taiwan 2026 視察レポート〜
MetCore Institute代表の腰原です。 2026年9月2日〜4日に台北南港展覧館(TaiNEX)で開催された「SEMICON Taiwan 2026」の現地視察を行いました。世界65カ国・地域から1,300社以上が出展し、13万人を超える来場者を記録した会場は、多くの入場者で溢れ大変な盛況ぶりでした。
今回、私自身が最前線の情報収集の場としてフォーカスしたのは、特設ステージである「TechXPot」でのセッションです。そこで奇しくも強く実感させられたのは、先端ロジックデバイスの微細化競争だけでなく、「シリコンフォトニクス(光電融合)」関連技術がかつてないほどの熱を帯びているという事実でした。
光学デバイス向けE-Beamリソグラフィの最前線
特に興味深かったのが、”Advanced Electron Beam Lithography Solutions for Optical Communication Devices”と題されたプレゼンテーションです。光学通信デバイスにおいては、微細な「ピッチ」の精度が直接デバイスの性能に直結するため、E-Beam(電子ビーム)リソグラフィ装置の役割が極めて重要になります。 現在、同装置はワールドワイドで145台稼働しており、顧客の求める性能に合わせて130キロと50キロという異なる加速電圧を持つ装置が使い分けられています。また、スティッチングエラーの低減や、装置内部の自己環境制御(self-environment control system)の保持など、歩留まり向上に向けたアプローチが進んでいることが報告されました。
シリコンフォトニクスのテスト・計測が抱える課題
さらに、”Silicon Photonics Test Solutions”の発表では、コスト低減の鍵を握る「チップレベルでのテスト」に焦点が当てられました。 現在、シリコンフォトニクスの検査には、以下の4つのステップが顧客のニーズに応じて使い分けられています。
- シングルサイドプローブテスト
- 両面プローブテスト(顧客ごとにアプローチが異なる)
- シングルあるいは両面のプローブおよび電気検査
- パッケージレベルでの検査
テストの種類も「パッシブ」「アクティブ」「AT-speedテスト」「環境ストレステスト」の4種が存在しますが、発表の中で特に印象的だったのは「リピータビリティ(再現性)とコリレーション(相関性)の確保が難しい」という現場のリアルな課題でした。 前工程の計測技術(Metrology)を牽引してきた我々から見ても、光と電気の境界領域における計測・検査プロセスの標準化は、今後最も投資対効果の高い事業領域になると確信しています。
激化するサプライチェーン誘致合戦
一方で、USパビリオンの発表からは地政学的なダイナミズムも感じられました。米国政府の総意として台湾企業を誘致し税収と雇用を促進したい思惑がある中、各州が独自のセールスポイントを強調していました。
- アリゾナ州: 税率の低さ、エネルギーの安定供給、豊富なリソース。
- カリフォルニア州: ベンチャーキャピタルへのアクセス、シリコンバレーの存在、Deep Techへの可能性、エコシステムの完備。
- ミシガン州: 自動車産業の基盤、水資源の豊富さ、半導体関連企業・人材の集積。 (他、コロラド州、フロリダ州、アイダホ州、インディアナ州もそれぞれアピール)
技術のパラダイムシフトと、国家間の強烈なエコシステム誘致合戦。SEMICON Taiwan 2026は、半導体業界が次なる次元(Transform Tomorrow)へ移行する節目を強烈に印象付ける場となりました。


