【戦略コラム】「混沌」と「熱狂」のインド半導体市場 〜Semicon 2.0から読み解くエコシステム構築の最前線〜

MetCore Institute代表の[お名前]です。 台湾での先端技術の熱狂から2週間後、私はインド・ニューデリー(Yashobhoomi)で開催された「SEMICON India 2026(9月17日〜19日)」の会場に立っていました。テーマに「Silicon to Systems: Building the Ecosystem」が掲げられたこの展示会で私が肌で感じたのは、まさに“混沌(カオス)”と、そこから生まれる桁違いの“熱狂”でした。

「カオス」の中にあるインドのリアル

現地の凄まじいエネルギーを語る前に、視察の裏側にあったリアルな実態をお伝えせざるを得ません。 事前のe-arrival申請にも関わらず入国審査のたらい回しで1時間を要し、街に出れば3車線の道路に5台の車がひしめき合い、クラクションが鳴り響き車間距離もわずかな中、その脇を牛が悠然と歩くという光景が広がっていました。両替ですら、チップ用の100ルピー札を得るために交渉が必要な状況です。 会場入りする際も、オフィシャルガイドの指定ゲートにUberで向かうと別のゲートを指定され、最終的に歩道のない道を30分歩いて汗だくで到着。セキュリティの厳重さもあり、初日AM6:30からの限定バッジピックアップもシステムエラーで大混乱という有様でした。

しかし、この「混沌」こそが、爆発的な成長前夜のインドの姿そのものでした。会場の展示ブースはEUVのような最先端装置ではなく1世代前の装置が中心であり、Micron、AMD、そして量子コンピュータ模型を展示するIBMなど、主に「人材確保」に向けたアピールが目立っていました。

Semicon 2.0の発表と巨大投資の連鎖

本イベントの最重要ハイライトは、モディ首相が登壇したプレナリーセッションです。首相はヒンディー語で演説し、設計から製造、パッケージングまでを完結させる独自のエコシステム構築と、エネルギー網(太陽光やSMR)の拡充をアピールしました。 ここで発表されたのが、新たな国家戦略「Semicon 2.0」です。設計、装置・材料、ファブ拡張、高度パッケージング、応用R&D、そして現場で即戦力となる「10万人の技術者育成」という6つの柱が宣言されました。

これに呼応するように、グローバル企業から凄まじい規模の発表が相次ぎました。

  • タタ・エレクトロニクス: 300mmファブおよびパッケージング施設の建設で15万人以上の雇用(女性比率65%)を創出。ASMLや日本企業(JSR、東京応化工業、住友化学など)を含む450社以上のパートナーを結集し、16件のMoUを締結。台湾PSMCへのエンジニア300名の研修派遣も明かされました。
  • アプライド・マテリアルズ: 今後10年間で50億ドル(50 Billion USD)を投じる「Vision 2035」を発表し、140エーカーのR&Dパーク新設とサプライチェーンの10倍拡大を宣言。
  • マイクロン・テクノロジー: インド初となるOSAT工場からの「Made in India」メモリの商業出荷開始を発表。
  • 東京エレクトロン&ラムリサーチ: TELは来年インドに技術者トレーニングセンターを開設する計画を発表。ラムリサーチは約10,000クロールルピーを投じたシリコン部品製造工場の設立を発表しました。
  • メルク・エレクトロニクス: 超高純度の重要性を説き、「デリー州全体の中から落ちている1本の小さな鍵を探し出すようなもの」と半導体製造の難易度を比喩しながら、サプライチェーンの現地化を強調しました。

視察を終えて

SEMIのAjit Manocha会長が「各国間の競争は総合的なエコシステムの強さへと移行している。自らの強みを選び出し、サプライチェーンで『不可欠(Indispensable)な存在』になることが重要」と語った通りです。